エリのおいしい異文化体験

海外に興味がある方に向けて、食事、言語、旅行、ダイエット、育児など、欧米の知恵と日常を幅広く発信しています!

短足のミニ羊:ウェサン羊のご紹介

f:id:Ericat:20201231234706j:plain

https://ouessantschafe-suedtirol.jimdofree.com/


「好きな動物ランキング」の上位は犬と猫。ペットの代表的動物が上位にくるのは当然なのかも。次いで、ペンギン、イルカ、パンダ、馬、ウサギ、トラとありました(好きな動物ランキング 1位 犬、2位 猫、3位 ペンギン|ニフティニュース)。

 

ペコリーノウールの親であるはあまり人気がないのでしょうか。確かに、真っ白でふわふわの愛らしい羊のイラストと、灰色がかった毛に真面目な顔つきをした本物の羊とではかなりのギャップがあるし、庶民的なイメージから「できることならペットとして飼いたい」という気持ちにはたどり着かないでしょう。少なくとも、ウェサン羊に出会うまでは。

 

f:id:Ericat:20201226005439j:plain

https://ouessantschafe-suedtirol.jimdofree.com/
ウェサン羊の正体

小さくてかわいいもの好きの日本人であれば、ウェサン羊を飼いたいと思うでしょう。ウェサン羊は、イギリス海峡に浮かぶウェサン島(フランス北西部ブルターニュ地方)出身。短足の黒毛羊で、(改良ではなくナチュラルセレクションの結果)世界一小さい家畜羊とも言われています。

 

小さいとはいっても、ハムスターのように手の平にのったり、猫のようにひざにのったりするサイズではありません。写真は子羊ですが、オスは肩高が最大49センチで体重21キロ、メスは最大46センチで16キロにまで成長します。英国種のなかで一番小さいとされるソエイ羊よりさらに5センチほど小さいのだとか。ちなみに静岡市立日本平動物園にいるメリノ種の羊たちは、オスが55~70センチ、メスが45~55センチと記載あり。ウェサン羊は、オスとメスの間でさほど差がないことがわかります。

 

ウェサン羊は現在、オランダフランスで最も多く飼育されています。ベルギー、ドイツ、スイス、イギリスにも小規模のブリーダー協会が存在し、チューリッヒの動物園やアイルランドのテーマパークなどで出会えたりもします。

 

ミニ羊を生みだしたウェサン島の自然

こんな小さな羊を生みだしたウェサン島の自然とはいかなるものだったのか。行ったことがないので何とも言えませんが、とにかく「過酷な自然環境」なんだとか。ウェサン島の300メートル沖に、ある写真で一躍有名になったジュマン灯台たるものがあります。そしてウェサン島の陸には、世界で最もパワフルな灯台の一つといわれるクレアシュ灯台がそびえ立っています。激しい波潮の流れ強い嵐が日常茶飯事。ヨーロッパで最も危険な海峡の一つといわれたこの地域に、ウェサン島は位置するのです。巨大な嵐が島を襲った時、ミニサイズの羊は茂みに入って身を守ることができたのかも。それに加えて、乏しい土地で育ったため、十分な食糧がなく、あまり成長しなかったのでしょう。

 

ウェサン羊の自然淘汰は、人間の手により促されたともいわれています。ウェサン島では大きな動物は殺され、小さな動物が生かされたのだとか。つまり、ウェサン羊は100%自然の力で小さくなっていったとは言えないということですね。

 

ちなみに、書面に残された最も古いウェサン羊の記述は1754年のこと。1世紀後の1852年には、約6000頭のウェサン羊がウェサン島にいたことがわかっています。当時の人口は2300人弱なので、1人2頭以上所有していた計算になります。まさに羊天国ですね。

 

余談ですが、ウェサン島を舞台にしたフランス映画があります。その名も『灯台守の恋』(2004年)。映画にウェサン羊が出演しているかは不明ですが、それを期待して観てみるのもアリかもしれません。

 

 

ウェサン羊のお仕事

さて、筆者が暮らす北イタリアの村からおよそ40分のところに、このウェサン羊のブリーダー家族が営む農家民宿があります。冬の間、羊たちは筆者の村にワーケーションに来ます。ブドウ畑を散策しながら雑草を食べ、畑でお手洗いに行くのが彼らのお仕事。ウェサン羊はちびっこなのでブドウのつるを間違って食べることもなく、ナチュラルな芝刈り機の役目を果たしつつブドウ畑を肥やしてくれます。同時にコロコロ、フワフワな姿で村人を癒す働き者なのです。

 

f:id:Ericat:20201226005258j:plain

https://ouessantschafe-suedtirol.jimdofree.com/
ウェサン羊の副産物

ウェサン羊のお仕事を主産物とします。それでは、うれしい副産物のお話。まずはウール。ウェサン羊は元々、黒毛のウールのために飼育されていたらしく、染める必要のないウェサン羊のウールはフェルトにも適しているそう。主に黒毛ではあるけれど、茶色と白色の子も見かけます。主にこの3色です。この3種を混ぜたら、自然色のフワフワ毛糸のできあがり~。

 

さて、ウェサン羊は小さいので、羊肉にする価値はあまりないとブリーダーさんは言います。ウェサン羊が大好きだから、お肉にしてほしくないのかもしれないですね。確かに可愛すぎて羊肉にするなんて考えられないですが、一応「すごくおいしい」という噂も聞いています。

 

羊のラテで作ったイタリアンチーズと言えばペコリーノでしょう。ウェサン羊のミルクでチーズが作れたらいいのですが、小柄なだけ、相当の時間を費やすことでしょう。ミルクは、子羊たちのためにとっておくのが一番ですね。

 

f:id:Ericat:20201231234900j:plain

https://ouessantschafe-suedtirol.jimdofree.com/
ウェサン羊のお値段

可愛いだけでなく、とっても役に立つ羊さんのお値段はいくらでしょう。北イタリアのブリーダーさんの羊は、メス2頭とオス1頭で900ユーロ+税です。1頭約3万8千円+税です。値段相場が40万円近くするトイプードルの10分の1!一緒に遊べて寝れるワンちゃんと比べてはいけないのかもしれませんが、とってもお得な気がしませんか?

 

ちなみに羊さんは1頭だと寂しいので、最低でも3頭一緒に育ててあげましょう。もっと心地よく育てたい場合は5~10頭がオススメです。

 

ウェサン羊を飼うには

イタリアでは60センチ以下の羊はウェサン羊として売られていると、ブリーダーさんは言います。「小さく生まれた羊」「小さく育った羊」には後に身体や健康の異常が現れることもあり、由緒あるウェサン羊よりも安く購入することができるでしょう。

 

このブリーダーさんから羊さんを買うには条件があります。「codice di stalla」というものを持っていること。むりやり訳すと「羊小屋番号」となります。3頭の羊さんに適した2平方キロメートル以上の土地があれば、獣医さんが発行してくれるそうです。ブドウ畑があればウェサン羊が飼えそうですね。でも、そんな土地、持っていませんよ。残念ですね。もう少しの間、夢を見ていたかったな~。

 

まとめ

ウェサン島の過酷な環境で進化を繰り返し、たくましくも小さく育ったウェサン羊。可愛いだけでなく、地球にやさしい農業のために人間の良きパートナーとして活躍しています。ウェサン羊に熱い声援を!